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胃内視鏡検査

胃がんは日本人に非常に多い悪性腫瘍であり、世界レベルでみますと、風土病を思わせるほど高率です。これには日本独特の食習慣とピロリ菌の陽性率が異常に高いことが原因と推測されています。

年齢とともに胃がんの発生率が高まりますので、40歳以上の方は(とくに近親者でがんにかかられた人が複数いらっしゃる場合)積極的に胃の内視鏡検査をお受けになることをお勧めします。
早期胃がんの状態で発見できれば、手術による治療率は90%を超えています。
また、病変によっては内視鏡手術の適応となり、開腹しないで済むこともあります。

検査の結果で何らかの異常を指摘された方は、定期的な検査が必要となります。
初回検査で異常がなかった方は、2〜3年間は様子をみても良いと思われますが、1回の検査では見落としがある危険性を考慮すると、1年後にもう1回検査を受けておいた方がよいでしょう。

内視鏡による胃がん検診について

昨年から目黒区では「内視鏡による胃がん検診」が始まりました。
目黒区に在住で50歳以上の方は、2年に1回、無料で内視鏡検査が受けられることになりました。

昨年は4,973人の方が受診され、33件の「がん」が発見されました(発見率0.66%)。
発見された「がん」の内訳は、胃癌20件(発見率0.40%)、食道癌11件(発見率0.22%)、
下咽頭癌1件、胃悪性リンパ腫1件で、このうち27件(82%)が早期癌でした。

「バリウムによる胃がん検診」では、過去15年間に19件の胃癌しか発見されず、
しかも、そのほとんどが進行癌であったことに比べると、格段の好成績でした。

当院では398件の検診を行い、9件の「がん」を発見しました(発見率2.26%)。

目黒区全体の成績に比べ、3.4倍高率に「がん」を発見できたことになります。

当院ではレーザー光観察が可能な最新式の経鼻内視鏡を導入しており、
これが多数の早期癌の発見につながったと考えています。

当院の検査方法

当クリニックでは直径5.9mmの細くて軟らかい内視鏡を導入しました。
これを鼻の穴から挿入しますと、舌根部を圧迫しませんので、嘔吐反射が起こりません。
従来では考えられないほど楽に検査を行うことができます。

静脈麻酔の必要がありませんので、検査終了後すぐにお仕事ができます。車の運転も可能です。
鼻の局所麻酔のみで、ノドのしびれはわずかですので、すぐに飲食が可能です。
麻酔による事故の危険性も回避できます。

鼻腔が狭く、内視鏡が通過しない場合には、経口的に内視鏡を挿入いたします。
この場合には、ノドに局所麻酔を行いますので、飲食の開始を1〜2時間遅らせていただく必要があります。

内視鏡検査は通常5〜10分で終了します。

原則として予約制です。お電話にてご予約ください。
現状では、おおむね2週間以内に検査をお受けいただいております。

レントゲン検査との比較

X線(放射線)の被爆がありません。
粘膜の色調の変化、出血の有無を知ることができます。
組織を採取し、良悪性の診断が可能です。

検査費用

何らかの症状に対し検査を行った場合には、健康保険の適応となり、1割〜3割の負担で検査が受けられます。
健康診断目的の場合は自費扱いとなります(10割負担)。
健康診断で病変が発見された場合、組織検査の費用は健康保険扱いとなります。
胃腫瘍あるいは十二指腸潰瘍と診断された場合には、ピロリ菌検査の費用も健康保険扱いとなります。

検査内容 1割負担 3割負担 健康診断
 胃内視鏡検査のみ 1,500円程度 4,500円程度 15,000円程度
 胃内視鏡検査+ピロリ菌検査 2,000円程度 6,000円程度 詳細はお問い合わせください
 胃内視鏡検査+組織検査 2,800円程度 8,400円程度
 胃内視鏡検査+ピロリ菌検査+組織検査 3,000円程度 9,000円程度


経口内視鏡検査と経鼻内視鏡検査の比較

当院では平成18年2月より経鼻内視鏡を導入しました。平成29年12月までの11年11か月間に7,872件(年間平均661件)の検査を行いました。
このうち7,847件(99.7%)は経鼻的に検査を行うことができました。
経口的に検査を行ったのは25件(0.3%)のみで、鼻腔が狭く内視鏡が通過不能だった方が14件、クシャミが連発して経鼻的な挿入をあきらめた方が1件、 鼻の痛みを強く訴えた方が1件、キシロカイン過敏症のため無麻酔で実施した方が1件、 初めから経鼻的な挿入を拒否した方が8件でした。

検査の苦痛を少なくするための静脈麻酔薬や胃の蠕動を抑える注射薬を使用しませんので、高齢の患者さんや合併症のある患者さんにも安心して検査を行うことができました。
検査に伴う苦痛としては、鼻腔を通過する際の痛み、食道の入り口を通過する際の違和感、送気による腹部膨満感などを訴えた方が数名おられましたが、 「思ったより楽でした」「以前の検査よりもずっと楽でした」「自分の胃の中が見えて面白かった」「来年も是非お願いします」「家族や友人にも勧めます」という方がほとんどでした。
検査終了後、内視鏡が通過した鼻腔内に、血管を収縮させる点鼻薬を噴霧するようにしていらい、鼻出血で難渋した方は経験していません。

平成18年1月までの3年10か月間に行った経口内視鏡検査870件の成績と比較しました(下表)。
食道癌、胃癌、悪性リンパ腫など、臨床的に問題となる病変の発見率は、経口内視鏡検査では0.69%(6/870)、経鼻内内視鏡検査では1.23%(97/7,872)と両者間に有意差はなく、むしろ経鼻内視鏡検査の方が良好な成績でした。

従来の経鼻内視鏡は観察視野や画像、操作性に難点があり、診断能力の低下が危惧されていました。
当院で採用しているフジフィルムメディカル製の経鼻内視鏡(Advancia EG-530NW)は4方向アングルで操作性に優れ、観察視野が広く、 画像も明るく、解像度も高いため、従来の内視鏡検査と同等以上の診断成績を上げることができたと考えています。

経口内視鏡:870件
(H14.4〜H18.1)
経鼻内視鏡:7,872件
(H18.2〜H29.12)
 食道癌 1 20※
 食道炎 14(33) 232(357)
 その他の食道病変 1(60) 101(1,127)※※
 早期胃癌 3 41(3)
 進行胃癌 2 22(1)
 胃悪性リンパ腫 0 7
 胃異型上皮(腺腫) 6 19(1)
 胃潰瘍 65(2) 631(92)
 慢性胃炎 652(82) 4,856(1,481)
 胃ポリープ 16(88) 859(630)
 その他の胃病変 18(6) 151(316)
 十二指腸潰瘍 49(12) 326(103)
 その他の十二指腸病変 5(16) 174(418)※※※
 異常なし 38 425
()内は副病変として診断された件数を示します
※ 下咽頭早期癌1件を含みます
※※ 食道異型上皮2件を含みます
※※※ 十二指腸早期癌1件を含みます

内視鏡の機種による検査成績の比較

2002〜2005
(経口)
2006〜2010
(経鼻@)
2011〜2014
(経鼻A)
2015〜2017
(経鼻B)
 検査件数 841 3,129 2,621 2,160 8,751
 食道癌 1 6 3 10 20
 胃癌 5(3) 29(14) 31(21) 20(15) 85(53)
()内は早期胃癌

当院では2002年から2005年の間は経口的に内視鏡検査を行っていました(経口期)。
2006年より経鼻内視鏡を導入しました(経鼻@期)。
2011年に高輝度・高画質の上位機種に更新しました(経鼻A期)。
2015年からはレーザー光観察が可能な最新機種に更新しました(経鼻B期)。

これまでに8,751件の検査を行い、食道癌20件(0.21%)、胃癌85件(0.89%)を発見しました。
発見された胃癌のうち53件(62.4%)は早期胃癌でした。

各期別の食道癌発見率は、経口期0.12%、経鼻@期0.19%、経鼻A期0.11%、経鼻B期0.46%でした。
経鼻B期の食道癌発見率は、それ以前に比べ3倍以上高率で、統計学的に有意差を認めました(P<0.02)。

各期別の胃癌発見率は、経口期0.59%、経鼻@期0.93%、経鼻A期1.18%、経鼻B期0.93%でした。
経鼻内視鏡検査の胃癌発見率は経口内視鏡検査に比べ1.7倍高率でした。
経鼻内視鏡の機種別の胃癌発見率に差はありませんでした。

発見された胃癌のうち早期胃癌の占める比率は、経口期60.0%、経鼻@期48.3%、経鼻A期67.7%、経鼻B期75.0%でした。
経口内視鏡と経鼻内視鏡の成績はほぼ同等で、経鼻内視鏡の機種による差も認められませんでした。

以上をまとめますと、

@当院ではこれまでに8,751件の内視鏡検査を行い、食道癌20件(0.21%)、胃癌85件(0.89%)を発見しました。発見された胃癌のうち53件(62.4%)は早期胃癌でした。

Aレーザー光観察ができる最新の経鼻内視鏡はそれ以前の機種に比べ、食道癌の発見率が3倍以上高率でした。

B経鼻内視鏡は経口内視鏡に比べ、胃癌の発見率が1.7倍高率でした。

C発見された胃癌のうち早期胃癌の占める比率には、検査機種間で差を認めませんでした。

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